秘密の地図を描こう

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「ちょっと……シン、どうしたのよ」
 ルナマリアがこう問いかけてきた。
「何故、俺に?」
 本人に聞けばいいだろう、と言外に聞き返す。
「聞ける雰囲気じゃないでしょう?」
 あれ、と口にしながら、彼女は視線を移動させる。その先には精彩を欠いたシンの姿があった」
「……確かに」
 どうやら、未だに結論を出せないようだ。それはそれで仕方がないのではないか。しかし、誰かが手助けできることではない。
 それをどうやってルナマリアに伝えようか。
 レイがそんなことを考えているとは知らないのだろう。
「何か、言われてないの?」
 同室でしょう? と彼女は言葉を重ねてきた。
「……知ってはいるが、自分で結論を出さなければ意味がないことだ」
 脇から口を挟むとさらに混乱するだけだ、と続ける。
「それはあなたの判断?」
「いや……アイマン教官からの指示も入っている」
 イザークからそう言われたそうだ、と告げる。
「シン、ジュール隊長に何かをしたの?」
 あの場か、と彼女の唇が綴った。
「そこまでは聞いていないが……あいつの性格を考えればあり得るな」
 先日のシミュレーションの結果で憤っていたし、と口にすれば、ルナマリアもうなずいて見せる。
「あれは、見事なまでに玉砕していたものね」
 一瞬だったし、と彼女は感心したように続けた。
「やっぱり、あれはジュール隊長の機体だったの?」
 動きが他のものとは違ったが、と口にするあたり、ルナマリアの観察眼も侮れないと思う。
「だそうだ。他にもエルスマン副官や教官達も参加されていたらしい」
 当たらなくてよかったのか、と続けたのは本音だ。
 だが、キラにつきあってもらっている以上、それなりに戦えなければ意味がない。そう思う。
「……あっさりとやられるのはいやだけど、一度、相手をしてもらいたいわ」
 自分の実力がわかるから、と彼女は口にした。
「でも、そう言うことなら、確かに放っておいた方がいいか。下手に慰めようとして傷口に塩をすり込むようなことをするとまずいもの」
 メイリン達にも言っておく、とルナマリアは付け加える。
「頼む」
 自分が口を出すよりもその方がいいに決まっている、とレイは言った。
「……別に、あなたでもみんなは気にしないと思うけど……」
 と言うよりも、最近、つきあいが悪いと言われているぞ……と彼女はレイの鼻先に指を突きつけてくる。
「そう言われてもな……こちらにも事情がある」
「家庭の、でしょう。わかっているわよ」
 だから、自由時間ぐらいつきあえ、と彼女は言う。
 そう言われても、自由時間でなければキラの様子を見に行けないのだが……と心の中で呟く。しかし、それを彼女に告げるわけにはいかない。
「シンの尻ぬぐいがないときならばな」
 最近はそればかりだ、と苦笑とともに告げる。
「……まぁ、それはレイにしかできないものね」
 がんばってね、と彼女はそのまま彼の肩をたたいてきた。
「しかし、鬱陶しいのはどうしようかしら」
 見ているだけで落ち込みたくなる。彼女は視線だけを移動するとそう呟いた。
「まぁ、視界に入れなきゃいいのよね」
 そうしよう、と彼女は結論を出す。
「そうだな」
 それができればいいが、とレイはため息をつく。
「とりあえず、早々に浮上してくれればいいが」
 あるいは、あきらめるかだ。
「こちらまで足を引っ張られないようにするしかないな」
 今の順位を落としたくないから、と続ける。最低限でも《紅》をとること。それがキラのそばにいられる条件だ、と自分は考えている。
「まぁ、そうよね」
 ルナマリアもそれは同意らしい。
「シンにはさっさとなんとかなってもらうしかないわね」
 手出しはできないけど、と呟く。
「本当もどかしいわ」
 何もできないのは、と彼女はため息をついた。
 まるでそれを合図にしたかのように始業のブザーが鳴る。
「まずいわね」
 話はここまで、と彼女は言う。
「そうだな」
 席に着くか、と告げると同時に二人は行動を開始した。

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最遊釈厄伝